BLOG ブログ

自筆証書遺言書の保管制度について(4)~遺言書をもっと身近に~

遺言について話しをしている家族

令和2年7月から、新しく自筆証書遺言書の保管制度が開始されました。

この制度により、自筆証書遺言の弱点について、ある程度改善されるのではないかと思われます。

そこで、このブログでは4回に分けて、この制度の特徴はどのようなものか、この制度をどのように利用することができるのかなど、この制度の詳細について以下の構成でご紹介いたします。今回はその4回目です。

1.自筆証書遺言書の保管制度って何?~制度の概要・特徴~

2.自筆証書遺言書をどのように預けたらいいの?~遺言者の手続き~

3.相続人はどのように遺言書を見ることができるの?~相続人等の手続き~

4.遺言書の存在をどのように知ることができるの?~通知について~

5.まとめ

このブログを通して、遺された大切な方々のために、遺言書を身近なものとして考えてみるきっかけになれば幸いに存じます。

4.遺言書の存在をどのように知ることができるの?
  ~通知について~

通知
前回のブログでも触れましたが、遺言書保管所(法務局)から、相続人、受遺者、遺言執行者等に対して、遺言書が遺言書保管所に保管されている旨を通知することになっています。この通知は、ご自身に関係する遺言書が遺言書保管所に保管されていることをお知らせして、その遺言書の内容を確認することを促すものであるため、この通知を受領した場合、最寄りの遺言書保管所において、その遺言書の内容を確認していただくことが望まれます。

通知には、以下の関係遺言書保管通知と死亡時の通知の2種類があります。

(1)関係遺言書保管通知

・遺言者が亡くなられた後、相続人、受遺者、遺言執行者が、遺言書保管所(法務局)に保管されている遺言書を閲覧したり、遺言書情報証明書の交付請求をしたときに、遺言書保管官(遺言書保管所の職員)が、その他の相続人、受遺者、遺言執行者に対して、遺言書保管所に遺言書が保管されている旨を通知します。

・これにより、その他の全ての相続人、受遺者、遺言執行者に遺言書が保管されていることが伝わることになります。この通知を使って、その他の相続人らも遺言書の閲覧、または遺言書情報証明書の交付請求をすることができます。

・ただし、相続人、受遺者、遺言執行者のいずれかの方が、遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付請求をしなければ、遺言者が亡くなられた後も、この通知は実施されないことになります。この点を補うものとして、以下に説明する「死亡時の通知」があります。

(2)死亡時の通知

・遺言者が亡くなられた事実を把握することが可能になる仕組み(*1)により、遺言書保管官(遺言書保管所の職員)が遺言者の死亡の事実を確認した場合、あらかじめ遺言者が指定した者に対して、遺言書が保管されている旨が通知されます。

・この死亡時の通知は、遺言者が希望される場合に限り実施されます。遺言書の保管の申請時に、通知対象者を指定します。通知対象者は、遺言者の推定相続人、遺言書に記載された受遺者および遺言執行者から1名を指定します。まずは、その方に遺言書が保管されている事実が伝われば、その他の相続人等にも確実に伝わると思われるような立場の方や、遺言書が保管されている事実を確実に伝えたい方等を選ぶことになります。

・この通知を受領された受遺者および遺言執行者は、この通知を使って、遺言書の閲覧、または遺言書情報証明書の交付請求をすることができます。

・一方、この通知を受領された推定相続人は、相続開始時点で相続人でない場合、遺言書の閲覧等はできません。このため、遺言書の保管の申請時点で、死亡時の通知の対象者として推定相続人を指定されたとしても、その方が相続開始時点では、相続人ではなくなることが予想される場合は、遺言者は変更届出書を提出して、死亡時の通知対象者を変更しておいた方が良いと思われます(同タイトルブログの2回目の「2. 遺言者の手続き」の「変更の届出」を参照)。

・この死亡時の通知は、令和3年度以降から運用開始の予定です。

(*1)遺言者の同意を得た上で、遺言者の氏名、生年月日、本籍地等の情報を遺言書保管官(遺言書保管所の職員)が戸籍担当部局に提供した場合、遺言者が亡くなられた後に、遺言者の死亡の事実に関する情報を遺言書保管官が戸籍担当部局から取得することになります。

5.まとめ

・一般的に、自筆証書遺言は、一定のルールを守れば、ご自身でいつでも自由に書いたり、書き直したりすることが容易にできて、気軽にできるイメージがありますが、一方で、保管方法を工夫しないと、見つけてもらえないとか、破棄、隠蔽、改ざん等のリスクがあったり、遺された家族に検認の負担をかけたりすることもあります。

・このような破棄等のリスクや検認の負担については、今般の保管制度により、改善されることが期待されます。

・ただし、自筆証書遺言では、遺言内容の信憑性について疑問を持たれ、相続人間で紛争につながる場合もあり、これについては今般の保管制度では解決は難しいと思われます。このような恐れがある場合は、公正証書遺言の方が有効であると思います。自筆証書遺言か公正証書遺言か、どちらがご自身に適しているか、ご自身の事情を踏まえて、ご検討されることが必要と思いますが、自筆証書遺言を選択されるのであれば、今般の保管制度は利用された方が良いのではないでしょうか。

・遺言について、多くの方が関心はあるものの、実際にご自身が遺言を遺されるかどうか、自筆証書遺言か公正証書遺言か、決められていない方も多いのではないかと思います。遺された大切な方々のことを想えば、遺言を、もっと身近なものとして捉えた方が良いように思います。今般の自筆証書遺言書の保管制度の開始をきっかけにして、ご自身の遺言について、あらためて考えてみられてはどうでしょうか。

当事務所では、ご相談者の事情やお考えを聴かせていただいた上で、その方に適した遺言書の作成をサポートさせていただきます。

自筆証書遺言を作成する場合、その作成サポートをはじめ、これに必要となる推定相続人調査、相続関係説明図作成、財産調査業務等を行っています。今回ご紹介いたしました自筆証書遺言書の保管制度においては、遺言書保管事実証明書の交付請求書、および遺言書情報証明書の交付請求書の作成に関して、ご依頼をお受けすることができます。

公正証書遺言の場合も、同様に遺言書および関係資料を準備し、公証役場にて公正証書遺言の作成をサポートいたします。お気軽にご相談ください。