BLOG ブログ

自筆証書遺言書の保管制度について(1)~遺言書をもっと身近に~

おばあちゃんと孫

令和2年7月から、新しく自筆証書遺言書の保管制度が開始されました。

これまでも、自筆証書遺言書は、一定のルールがあるものの、比較的手軽に書くことができたのですが、ご自身が亡くなられた後、ちゃんと見つけてもらえるだろうか、改ざんされたり、破棄されたりされないだろうかなど、心配な面がありました。

このような問題が、この新しい制度により、ある程度改善されるのではないかと思われます。

そこで、このブログでは4回に分けて、この制度の特徴はどのようなものか、この制度をどのように利用することができるのかなど、この制度の詳細について以下の構成でご紹介いたします。

このブログを通して、遺された大切な方々のために、遺言書を身近なものとして考えてみるきっかけになれば幸いに存じます。

1.自筆証書遺言書の保管制度って何?~制度の概要・特徴~

2.自筆証書遺言書をどのように預けたらいいの?~遺言者の手続き~

3.相続人はどのように遺言書を見ることができるの?~相続人等の手続き~

4.遺言書の存在をどのように知ることができるの?~通知について~

5.まとめ

今回は、その1回目として、『自筆証書遺言書の保管制度って何?~制度の概要・特徴~』についてご紹介いたします。

1.自筆証書遺言書の保管制度って何?~制度の概要・特徴~

自筆証書遺言
相続法は、高齢化社会の進展などの社会情勢の変化に対応するため、約40年ぶりに大きな見直しが行われ、平成30年7月に改正されました。この改正相続法の成立と同日に「法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)」が制定されました。
自筆証書遺言書の保管制度は、この遺言書保管法に基づいて、令和2年7月10日に開始されたばかりの新しい制度です。
この自筆証書遺言書の保管制度により、どのようなことができるようになったのでしょうか。以下に、制度の概要・特徴についてまとめてみました。

 (1)どのようなことができるようになったのか~制度の概要~

・この制度では、遺言書保管所(法務局)で自筆証書遺言書の保管申請手続きを行うことにより、遺言書を遺された方(遺言者)がお亡くなりになられた後、遺言書が保管されている旨等について、相続人らに通知が送られます。

・この通知を受け取られた方は、遺言書保管所(法務局)で遺言書の内容を確認できます。

・また、相続人らが、遺言書保管所(法務局)で遺言書の保管の有無や遺言書の内容を確認した場合、他の相続人らにも、遺言書が保管されている旨の通知が送られます。

・相続開始後、通常、自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要となりますが、この保管制度を利用した場合は、自筆証書遺言の検認は不要となり、保管されている書類を使って相続手続きを行うことができます。

・これにより、遺言書の紛失、改ざん、隠匿等を防止し、遺言書の存在の把握が容易になることなどが期待されます。

 (2)どのように遺言書を預けるのか~遺言書の保管の申請~

・保管の申請の対象は、自筆証書遺言のみです。遺言書の内容については審査されませんが、形式面については自筆証書遺言の形式を守る必要があります。

・申請は、遺言者の住所地、本籍地、または遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所(法務局)で行います。

・申請は、手続きを行う遺言書保管所(法務局)を決めて、法務局の専用ホームページ、電話、または窓口で予約を行った上で、直接、遺言書保管所(法務局)の窓口で行います。

 (3)どのように保管されるのか~遺言書の保管、情報の管理~

・保管の申請がされた遺言書は、その原本が保管されるとともに、その画像情報(遺言書の写し。添付された財産目録の写しも含まれます)が、遺言書保管所(法務局)にある遺言書保管ファイルに記録・管理されることになります。

 (4)一旦預けた遺言書の内容は変更できないのか~遺言者による遺言書の閲覧、保管申請の撤回、内容の変更~

・遺言書の保管の申請後に、遺言者は、保管されている遺言書の閲覧を請求できます。また、遺言書の保管の申請を撤回することもできます。

・遺言者の生存中に、遺言者以外の方は、遺言書の閲覧を行うことはできません。

・遺言書の保管の申請を撤回した場合、遺言書の原本は遺言者に返還され、遺言書保管所(法務局)に保管されていた遺言書の画像情報も消去されます。

・遺言書の保管の申請後に、当初の遺言書の内容を変更したい場合は、一旦、保管申請の撤回をして、遺言書の返還を受けてから、遺言書の内容を変更して、再度、遺言書(変更版)の保管の申請をすることにより、遺言書の内容を変更することができます。また、保管申請の撤回をしないで、新たな遺言書を預けることも可能です。撤回の際には手数料は掛かりませんが、新たな(変更後の)遺言書の保管の申請の際には手数料が掛かります。

・遺言書の保管申請の撤回は、遺言書保管所(法務局)に遺言書を預けることをやめることであり、その遺言の効力が無効になるわけではありません。

 (5)相続人はどのようにして遺言書を見ることができるのか~相続開始後(遺言者がお亡くなりになられた後)の遺言書の閲覧等~

・相続人、受遺者、遺言執行者は、ご自身が相続人、受遺者等になっている遺言書が、遺言書保管所(法務局)に保管されているかどうか照会することができ、これについて証明した書面(遺言書保管事実証明書)の交付を請求できます。

・相続人、受遺者、遺言執行者は、遺言書の内容を確認することができる書面(遺言書情報証明書)の交付を請求できます。また、遺言書の閲覧の請求により、遺言書の原本、または、モニターによる遺言書の画像等を閲覧することができます。

・家族(相続人)であっても、遺言書保管所(法務局)に保管されている遺言書の原本を返却してもらうことはできません。遺言書の内容を確認するためには、遺言書情報証明書の交付請求、または遺言書の閲覧請求によるしかありません。

・遺言書情報証明書を交付したとき、または、遺言書を閲覧したとき、遺言書保管官(遺言書保管所の職員)は、速やかに、当該遺言書を保管していることを、他の相続人、受遺者、遺言執行者に通知します。これを関係遺言書保管通知と言います。

 (6)検認はどうなる?

・通常、自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要となりますが、遺言書保管所(法務局)に保管されている遺言書は、家庭裁判所による検認が不要となります。