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本邦の大学等を卒業した留学生の起業活動について ~留学生による起業促進に向けての動き~

2020年11月20日、法務省から「本邦の大学等を卒業した留学生による起業活動に係る措置について」プレスリリースがありました。

一定の要件の下、本邦の大学等を卒業又は修了した留学生に、起業活動のため、最長2年間の在留を認める新たな在留資格「特定活動」(卒業後起業活動)を措置するというものです。

今回は、これについて、公表資料を基にご紹介いたします。

これまでの経緯

留学生たちが話をしながら歩く
・外国人が日本で事業活動を行うためには、在留資格「経営・管理」を取得しなければなりません。在留資格「経営・管理」の要件として、事業所を確保すること、及び一定の事業規模を備えること(常勤職員2名以上、又は資金若しくは出資総額500万円以上、又はこれに準じる規模)を満たす必要があります。

・これまで国は、外国人起業家の受入れを促進するために、国家戦略特別区域制度の下で一定の起業要件を緩和したり、外国人起業活動促進事業等を実施してきました。

・今年7月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生基本方針2020」等において、外国人留学生による我が国での起業の円滑化を実現すべきことが盛り込まれました。

・これを受けて、今般、一定の要件の下、本邦の大学等を卒業又は修了した留学生に、起業活動のため、最長2年間の在留を認める新たな在留資格「特定活動」(卒業後起業活動)を措置する制度が開始されました。

留学生による起業促進に向けて
~概要~

留学生が語らう
今般の新たな在留資格「特定活動」(卒業後起業活動)に申請する際、以下の2つの場合があります。

(1)本邦の大学等(*1)を卒業後直ちに起業活動を希望する場合

・要件は以下の通りです。

  ①本邦で優秀な留学生の受け入れに意欲的に取り組んでいるとされる大学等(*1)を卒業又は修了していること。

  ②大学等(*1)に在学中から起業活動を行っており、卒業後も継続して起業活動を行うことを希望していること。

  ③卒業した大学等(*1)から、起業活動を行うことについて、推薦及び支援を受けていること。

  ④起業活動の状況を上記の大学等(*1)に報告すること。

  ⑤上記の大学等(*1)は、申請人の起業活動の継続が困難になった場合、及び在留資格「経営・管理」への変更が認められなかった場合に、帰国指導・支援を行うこと。

・上記の要件を満たす場合、在留資格「特定活動」(卒業後起業活動)による最長2年間の在留が認められることになります。

・在留資格「特定活動」(卒業後起業活動)に基づく在留期間中に、1週間に28時間以内の包括資格外活動が認められます。

・起業活動が完了した際には、在留資格「経営・管理」への在留資格変更許可申請を行うことになります。


(*1):文部科学省の「留学生就職促進プログラム」の採択校若しくは参画校、又は「スーパーグローバル大学創成支援事業」の採択校(大学、大学院、短期大学、又は高等専門学校)。


(2)外国人起業活動促進事業、又は国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業を利用した後に起業活動の継続を希望する場合

・要件は以下の通りです。

  ①本邦の大学等(*2)を卒業又は修了した後、引き続き、外国人起業活動促進事業、又は国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業を利用して本邦に在留していること(前者は在留資格「特定活動」、後者は在留資格「経営・管理」により在留)。

  ②上記の事業の期間内に起業に至らなかったが、引き続き、本邦に在留して起業活動を継続することを希望していること。

  ③外国人起業活動促進事業における外国人起業活動促進団体(地方公共団体)、又は国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業における関係地方公共団体が、起業に至らなかった理由について合理的な説明を行い、かつ、今後、起業に至る可能性が高いとの評価を行っていること。

  ④上記の地方公共団体、又は卒業した大学等(*2)から、起業活動を行うことについて、推薦及び支援を受けていること。

  ⑤起業活動の状況を上記の地方公共団体、又は上記の大学等(*2)に報告すること。

  ⑥上記の地方公共団体、又は上記の大学等(*2)は、申請人の起業活動の継続が困難になった場合、及び在留資格「経営・管理」への変更が認められなかった場合に、帰国指導・支援を行うこと。

・上記の要件を満たす場合、外国人起業活動促進事業、又は国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業を利用した後、在留資格「特定活動」(卒業後起業活動)への移行が認められ、上記の事業に基づく在留と合わせて最長2年間の在留が認められることになります。

・在留資格「特定活動」(卒業後起業活動)に基づく在留期間中に、1週間に28時間以内の包括資格外活動が認められます。

・起業活動が完了した際には、在留資格「経営・管理」への在留資格変更許可申請を行うことになります。

(*2):本邦の大学、大学院、短期大学、高等専門学校、又は専修学校の専門課程。

所感

未来
留学生による起業活動は決して容易なものではありません。ただし、日本の大学等で勉学に励み、その上で、日本で起業したいと真剣に考えておられる外国人の方に対して、起業の機会が拡げられたことは良かったのではないでしょうか。国籍やジェンダー等に関係なく、意欲のある方に対して、微力ながらサポートできるよう、自らも日々研鑽を重ねていかなければと感じております。