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自筆証書遺言書の保管制度について(2)~遺言書をもっと身近に~

遺言書

令和2年7月から、新しく自筆証書遺言書の保管制度が開始されました。

この制度により、自筆証書遺言の弱点について、ある程度改善されるのではないかと思われます。

そこで、このブログでは4回に分けて、この制度の特徴はどのようなものか、この制度をどのように利用することができるのかなど、この制度の詳細について以下の構成でご紹介いたします。今回はその2回目です。

1.自筆証書遺言書の保管制度って何?~制度の概要・特徴~

2.自筆証書遺言書をどのように預けたらいいの?~遺言者の手続き~

3.相続人はどのように遺言書を見ることができるの?~相続人等の手続き~

4.遺言書の存在をどのように知ることができるの?~通知について~

5.まとめ

このブログを通して、遺された大切な方々のために、遺言書を身近なものとして考えてみるきっかけになれば幸いに存じます。

2.自筆証書遺言書をどのように預けたらいいの?
  ~遺言者の手続き~

説明を聞いて納得する高齢者
遺言者(自筆証書遺言書を作成され、その保管を申請される方)は、どのように遺言書を遺言書保管所(法務局)に預ければよいのでしょうか。また、遺言者は、遺言書を預ける以外に、どのようなことができるのでしょうか。

(1)どのように遺言書を預けることができるのか  ~遺言書の保管申請の流れ・手続き内容~

遺言者は、以下の流れで、遺言書の保管申請を行うことになります。

 ①自筆証書遺言の作成

・通常の自筆証書遺言の様式に従って作成します。

・遺言書保管所(法務局)では、遺言内容について審査はされません。

・用紙はA4サイズ。余白は、左20mm以上、下10mm以上、上及び右5mm以上(余白部分にはページ数など何も記載しない)。(法務省:「自筆証書遺言書の様式の注意事項」より)

・財産目録以外は全て自書します。

・財産目録は、通帳のコピー等でもよいですが、全てのページに署名、押印が必要です。


 ②遺言書保管所(法務局)の決定

・以下のいずれかを管轄する遺言書保管所(法務局)で保管の申請をしなければならないため、該当する遺言書保管所(法務局)を決める必要があります。以下の全国の法務局(遺言書保管所)一覧を参考にしてください。

     ・遺言者の住所地

     ・遺言者の本籍地

     ・遺言者が所有する不動産の所在地

・ただし、すでに、他の遺言書を現に遺言書保管所に保管している場合は、当該遺言書保管所になります。

 ③保管申請書の作成

・保管申請書に必要事項を記入します。(以下のリンク先からダウンロード)

 ④保管申請の予約

・保管申請は、上記②の通り、手続きを行う遺言書保管所(法務局)を決めて、以下の専用ホームページ、電話、または窓口で予約を行う必要があります。遺言書保管所(法務局)の受付時間は、平日8:30~17:15(土・日・祝日・年末年始を除く)です。

 ⑤保管の申請

・以下の書類を持参して、予約した日時に、遺言者本人が遺言書保管所(法務局)で申請します。保管の申請ができるのは本人のみです。念のため、予約時に、必要書類等を再度確認するようにしてください。

   ・遺言書(ホッチキス止めはしないでください)

   ・保管申請書(事前に記入してください)

   ・本籍の記載のある住民票の写し(発行後3か月以内)

   ・遺言書が外国語により記載されている場合、日本語翻訳文も添付

   ・本人確認書類(以下のいずれか一つ)
    マイナンバーカード、運転免許証、運転経歴証明書、旅券、乗員手帳、在留カード、特別永住者証明書

   ・手数料(保管年数に関係なく1通につき3,900円。手数料納付用紙に3,900円分の収入印紙を貼付)

 ⑥保管証の受領

・申請手続き終了後に、遺言者の氏名、生年月日、遺言書保管所の名称、保管番号が記載された保管証が渡されます。大切に保管してください。

・遺言者による遺言書の閲覧、保管の申請の撤回、変更の届出の際、または、相続人等による遺言書情報証明書の交付請求等の際に、保管証の保管番号があれば便利です。

(2)遺言者は、一旦預けた遺言書をどのように確認できるか  ~遺言者による遺言書の閲覧~

・遺言者は、一旦預けたご自身の遺言書を後日確認することができます。遺言者は、遺言書の閲覧の請求により、遺言書保管所(法務局)で保管されている遺言書の内容を確認できます。閲覧方法は、モニターによる遺言書の画像の閲覧、または、遺言書の原本の閲覧となります。

・モニターによる閲覧は、全国どの遺言書保管所でも請求ができます。一方、遺言書の原本の閲覧は、原本が保管されている遺言書保管所のみで請求できます。

・閲覧請求できるのは、遺言者本人のみです。

(3)遺言者は、一旦預けた遺言書の保管を取り消したり、遺言書の内容を変更したい場合、どのようにすればよいか  ~遺言書の保管申請の撤回、遺言書の内容の変更~

・遺言者は、遺言書保管所(法務局)に一旦預けた遺言書について、保管申請の撤回の手続きを行うことにより、遺言書の原本の返還を受けることができ、遺言書保管所に保管されている画像情報も消去されます。

・保管申請の撤回手続きでは、遺言書の保管の申請の撤回書に必要事項を記入し、提出日時の予約をした上で同撤回書を提出します(予約は先述の「保管の申請の予約」を参照)。

・ただし、保管の申請の撤回ができるのは、遺言書の原本が現に保管されている遺言書保管所(法務局)に限られ、遺言者本人のみです。撤回の手数料は掛かりません。

・遺言書の保管申請の撤回は、遺言書保管所(法務局)に遺言書を預けることをやめることであり、その遺言の効力が無効になるわけではありません。

・遺言書を遺言書保管所(法務局)に預けた後に、当初の遺言書の内容を変更したい場合は、一旦、保管申請の撤回をして、遺言書の返還を受けてから、遺言書の内容を変更して、再度、遺言書(変更版)の保管の申請をすることにより、遺言書の内容を変更することができます。また、保管申請の撤回をしないで、新たな遺言書を預けることも可能です。撤回の際には手数料は掛かりませんが、新たな(変更後の)遺言書の保管の申請の際には、保管の手数料が掛かります。

(4)保管申請書類に変更が生じた場合、どのような届出が必要か  ~変更の届出~

・遺言者は、ご自身の氏名、住所等に変更が生じた場合、遺言書保管官(遺言書保管所の職員)に、住民票の写し等の必要な書類を添付して、変更届出書を提出する必要があります。

・遺言書の保管申請書に記載した受遺者、遺言執行者の住所等に変更が生じた場合にも、変更届出書を提出する必要があります。また、同保管申請書において、死亡時の通知の対象者として指定した推定相続人の住所や身分関係等に変更が生じた場合にも、変更届出書を提出する必要があります。

・この変更届出書は、全国どの遺言書保管所(法務局)に提出しても構いません。ただし、提出時の予約は必要となります(先述の「保管の申請の予約」を参照)。手数料は掛かりません。また、郵送でも対応してもらえます。

今回のブログでは、遺言者が、どのようにして遺言書を預けることができるのか、また、預けた後に、何ができるのかについて、ご紹介いたしました。なお、保管申請時の必要書類等については、今後、変更される可能性もありますので、事前に、ご自身に該当する遺言書保管所(法務局)に確認された上で、手続きを進められることを推奨いたします。

次回は、3回目として、『相続人はどのように遺言書を見ることができるの?~相続人等の手続き~』について、ご紹介いたします。